HOME > 研究会概要   > 研究会活動紹介 >シンポジウム3「肝障害と幹細胞 ― 肝修復における幹細胞の役割」の企画を担当して

研究会概要

シンポジウム3「肝障害と幹細胞 ― 肝修復における幹細胞の役割」の企画を担当して

西川 祐司
秋田大学医学部病理病態医学講座分子病態学分野 

 静岡での肝細胞研究会2日目に,長崎医療センター 小森敦正先生とともに,肝障害と幹細胞に関するシンポジウムを担当させていただきました.初めに,このような機会を与えていただいた会長の塩尻先生,シンポジストの方々,最後まで活発にディスカッションしていただいた参加者の皆様に感謝いたします.

 昨年末の企画段階で,本シンポジウムの主なテーマを,①肝障害からの回復には,肝内または肝外のどのタイプの細胞が有効なのか,②幹細胞の増殖および分化にはどのような肝内微小環境が必要なのか,の2点に絞りました.いずれも難しい問題で,明解な答えを出せる段階ではありませんが,シンポジウムを通して今後の研究を進める上で多くのヒントが得られたのではないかと思われます.

 最初のテーマに関しては,胎生期の肝幹細胞,オーバル細胞,胆管上皮細胞,肝細胞,骨髄細胞,脂肪組織中の間葉系幹細胞など様々な細胞タイプに関して新しい知見が紹介されました.東京大学医科学研究所 柿沼晴先生は,胎生肝に存在する肝幹/前駆細胞の中のCD13陽性画分がin vitro,in vivoで著明な増殖性を示すことを報告されました.東京大学分子細胞生物学研究所 田中稔先生はEpCAM,Dlk,TROP2などのマーカーを用いたオーバル細胞の性状解析の最新データを示されました.胆管上皮細胞に関しては,静岡大学 小池亨先生がガラクトサミン障害肝で出現するPdx-1陽性胆管上皮様細胞が肝細胞に分化する可能性を示され,小森先生はEMTを介した胆管上皮細胞の脱分化の可能性を論じられました.私自身は肝細胞が「両能性肝幹細胞」であることを示すin vitroのデータを紹介しました.肝に由来するこれらの細胞はいずれも肝障害の回復に有効である可能性がありますが,今後,標準化した移植モデルなどで有効性を比較検討する必要があると考えます.

 一方,山口大学 寺井崇二先生は骨髄細胞の移植による四塩化炭素肝障害軽減が,移植細胞の肝細胞分化よりも障害肝の微小環境の改善による可能性が高いことを示されました.また,国立がんセンター 落谷孝広先生は,脂肪由来間葉系幹細胞の肝疾患治療効果は必ずしも肝構成細胞への分化に依存していないとの新しいデータを報告されました.シンポジウム1で旭川医大 稲垣光裕先生もretrorsine+部分肝切除に対する骨髄細胞移植実験で同様の結果を報告しており,肝外幹細胞,骨髄細胞の治療効果のメカニズムの解明が今後の重要な検討課題となると思われます.

 肝微小環境については,寺井先生が移植された骨髄細胞の肝内における生存,増加が,ERストレスに関連したXBP1やGRP78の高発現に関連することを示されました.また,私はコラーゲンの増加や活性化クッパー細胞によるTNF-αの分泌など障害肝における微小環境の変化が肝細胞の分化状態に影響を与えることを述べました.移植細胞および既存細胞の分化,増殖を肝微小環境により制御することは,新たな肝障害の治療法を開発するためにも必要と思われます.

HP 第15回肝細胞研究会サイト

▲ページの先頭へ