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代表世話人あいさつ

代表世話人 仁科 博史
東京医科歯科大学難治疾患研究所 発生再生生物学分野

肝細胞研究会は、故市原明先生が立ち上げた初代培養肝細胞研究会を、坪内博仁先生、故大工原恭先生、故藤原研司先生、赤池敏宏先生らが引き継ぎ、基礎から臨床までを網羅する肝臓研究会として今日に至っています。代表世話人としては、赤池先生、藤原先生、吉里勝利先生、坪内先生、宮島篤先生、佐々木裕先生、三高俊広先生らに基本3年任期でお世話頂きました。私はこの伝統ある大役を2023年度から引き継ぎます。

私は「ストレスに応答する細胞内シグナル伝達経路」に興味を持つ基礎研究者です。カナダ留学時に遺伝子改変マウス作出技術を学び、シグナル研究に取り入れました。偶然、肝臓形成不全マウスの作出という結果に至り、1999年のFASEB meeting(米国アスペン)に招待されました。肝形成不全マウスが参加していた肝細胞研究会の仲間たちとの最初の出会いを作ってくれました。それから約四半世紀、居心地の良い本研究会に所属させて頂いています。

本研究会の長所は、全国の基礎研究者と臨床研究者がそれぞれの特徴を活かしながら肝臓という共通舞台で忌憚なく議論を交わしていること、そして肝臓研究初心者からプロまでが勉強できる記事をホームページに掲載し、更新し続けていること(1日平均100を超える閲覧数)、さらに年1度の学術集会では1会場でお互いの顔が認識可能な規模で開催していることが挙げられます。

一方、社会環境の著しい変化による新たな課題も生じています。例えば、研究会の運営に必要な経費の値上がり(年度単位で赤字がない体制の確立が必要)、学術集会開催の経済的負担が年々増加(特に基礎系は参加費以外の集金は困難)、そして1番の課題は若手研究者の減少問題です。消化器内科を含む臨床系でもClinician scientistになる若手は減少しています。基礎系では肝臓を専門とする若手研究者は稀です。この背景には、肝臓を実験材料にした生理学や薬理学、生化学などの生物学・医学の基幹研究領域から、膨大なゲノム情報を扱い肝がんなどの疾患の病因解明や有効な分子マーカーや治療法を探索するデータ科学領域に若手の興味が移っていること、また、臓器連関や腸内細菌叢の視点から、肝臓単独研究から、循環器系や神経系を含む多臓器研究へと展開していることが考えられます。研究を続けられるポストが少なく、経済的理由から研究から去る若手もいます。私の任期中の役割は、上記課題を少しでも改善することであると思っています。いずれも困難な課題であり、当然ではありますが、私1人では解決できません。会員の皆様のお力が必要です。どうぞよろしくお願いいたします。

最後に、市原先生に関するお話をさせて頂きます。私の恩師のお1人に宇井理生先生(東大・北大名誉教授、東京都臨床医学総合研究所名誉所長、文化功労者)がおられます。タンパク質分解の話題になった時、宇井先生曰く「昔、徳島の市原先生のところに伺い、田中啓二君をくださいとお願いした」と。私は、2人の名伯楽の会話を想像しながら、市原先生の飄々としたお姿を思い浮かべていました。空気の薄い高地アスペンでほろ酔い状態の市原先生に「おやすみなさい」と申し上げたところ、「年に600報以上の査読をしている。若い人に回すのは悪いから自分でこなしている。今夜もこれから数報査読だよ」と。徳島大学で開催された市原先生の追悼記念講演会のポスターを添えて、私のご挨拶とさせて頂きます。

令和5年9月吉日

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