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肝臓:温故知新

‘Sinusoid’の命名者C.S.Minot (1900): 毛細血管と区別した理由

和氣健二郎

‘Sinusoid’の名称をつくったのは誰か、また敢えて毛細血管と区別した理由は何か、を知る研究者は多くない。現在の教科書では類洞の特性は1950年以降に電顕観察で明らかになった微細構造の特徴に留まっている。ところが20世紀初期の英米系の教科書には、すでに ‘sinusoid’の用語を採用しているものがある。電顕のない時代に, 光顕観察のみでsinusoidと毛細血管との差異がわかる筈はないと思って調べてみたところ、その命名者はハーバート大学解剖学教授のC.S.Minot(1900)であることがわかった。Minotは‘sinusoid’の定義として5項目ほど挙げている。そのなかには現在の常識から受け入れられないものもあるが、われわれが全く気付いていなかった重要な問題が含まれている。例えば毛細血管の形成は能動的であるのに対し、肝類洞は実質細胞によって受動的に形成されるという。これは物と物との位置関係に関わる最近のSpatial Cell Biology (空間細胞生物学)の興味ある研究対象でもある。現在の医学生物学は一路微視的に向かって進展しているが、巨視的な立場も捨て難いことを教えてくれるのである。


Kenjiro Wake and Tetsuji Sato: ‘The sinusoid’ in the liver. Lessons learned from the original definition by Charles Sedgwick Minot (1900).
Anat. Rec. 2015 Dec: 298 (12) 2071-80. PubMed:26332299