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研究会活動報告

第14回肝細胞研究会に参加して

紙谷聡英
東京大学医科学研究所高次機能研究分野

 平成19年6月22日より23日まで、鹿児島城山観光ホテルで開催されました第14回肝細胞研究会に参加いたしました。肝細胞研究会は、医学系・理学系・工学系といった様々なバックグランドを持った発表が一同に介するところが非常に興味深く、今回の会でも、活発な討論が行なわれたと思います。

 私は胎生肝幹・前駆細胞の増殖・分化の分子メカニズムについて解析を進めており、本学会ではホメオボックス転写因子Prox-1が、肝幹・前駆細胞の細胞運動性や増殖性の亢進に関与することについて報告しました。肝幹細胞に関しては、昨今の再生医療や幹細胞生物学の興隆に沿って本学会でもシンポジウムのメインテーマの一つとして取り上げられており様々な発表がなされていました。特に、今回の発表では胎生期や発生段階の肝幹細胞についての研究に加えて、河村先生(東大・宮島研究室)の正常成体肝臓におけるEpCAM陽性肝幹細胞の同定や今先生(札幌医科大・三高研究室)のCD44陽性小型肝前駆細胞の発表に見られるように、今まで詳細には解明されていなかった成体での幹細胞や前駆細胞のPhenotypeが報告されていました。さらに成体における肝幹細胞の研究が進行していくことで、今後の細胞療法等への応用も含めて研究が発展するのではと考えています。

 工学的見地からの発表が多いことは、他の肝臓系学会と比較して本研究会の特色と考えられますが、今回もシート積層化技術など様々な発表がなされていました。肝細胞の機能をどうやって長期間維持するかは肝細胞研究の長年の課題の一つであり、狩野先生(東京女子医大・岡野研究室)の発表では、温度応答性培養皿を用いたシート状組織の構築技術を用いて肝細胞シートと血管内皮細胞シートを積層培養することで、長期間の機能維持に成功することが報告されていました。他にも、梶原先生(九州大・工学部)や谷下先生(慶応大・工学部)の研究室などからも細胞シートを利用した研究が報告され、一般的な平面培養だけでなく3次元的な構造を試験管内でどう構築していくかが、肝細胞生物学においてますます重要性を増していくのではと思われます。さらに特別講演では、東京工業大の赤池先生から、肝細胞にとどまらずES細胞などを用いた最先端の研究成果の報告がありました。

 今回の学会は、桜島で有名な観光地である鹿児島で行なわれました。残念ながら初日はあいにくの大雨になってしまいましたが、会場のホテルには綺麗な温泉設備が整っていて、露天風呂からは雄大な桜島の眺めが堪能できました。また、懇親会でも鹿児島名物の黒豚等々に舌鼓を打つような、学術会議の枠を超えて非常に楽しい時間を過ごすことができたのではないかと思います。本学会を主宰されました鹿児島大学の坪内先生には大変感謝いたしますとともに、今後ますます本学会で精力的な討論などができればと感じています。

HP 第14回肝細胞研究会サイト

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