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研究会活動紹介

第31回肝細胞研究会 報告

会長,酒井 康行(東京大学大学院工学系研究科・化学システム工学専攻)


写真1 会場の一条ホール

写真2 大会長ご挨拶

写真3 特別講演堀江徹先生

第31回肝細胞研究会は,2024年7月26日(金),27日(土)の2日間の会期で,東京大学弥生講堂(一条ホールおよびそのアネックスのセイホクギャラリー)にて開催を致しました.今回は,「ビボのインビトロ再現は可能か?」と致しました.この背景には,以前とは異なり細胞面と培養形態の両面で,「インビトロ再現」が展望できる時代が始まっているという状況があります.それをより系統的に目指すために,異なる分野の研究者による中長期の系統的な研究の更なる発展の一助ともなればと考え,世話人の先生方のご協力の下,オーガナイズを行いました.参加者は約200名(登録参加者192名,招待他約10名)で,そのうち会員外の方も55名おられました.

特別講演では,デイ・スリー研究所の堀江徹先生に「肝細胞の使い方、不適切にもほどがある」という大変刺激的なタイトルでお話しを頂きました.堀江先生は長年,製薬会社にお務めで,その経験を踏まえてデイ・スリー研究所を主催されています.創薬支援の立場から,現代の肝細胞培養系がヒトビボの応答の再現がまだまだ不十分であること,その克服のための培養系の更なる具体的な改善を提案されました.

展望講演では,国立成育医療研究センター研究所の中村和昭先生に「ヒト肝細胞にin vitro培養系:凍結肝細胞と培養細胞からの考察」と題してお話しを頂きました.生体肝移植時のドナー余剰肝から得られる肝細胞を利用した再生医療や先進的なin vitro評価系に関して幅広くご講演をいただきました.

シンポジウムは,「肝細胞研究と疾患バイオマーカー」,「創薬研究における肝細胞資源の現状と課題」,「肝細胞培養系の最前線」を題した3つが行われ,肝疾患への研究から創薬,それを支える培養系自体の改善まで最新の研究成果が発表されました.

一般演題としては,「発生・再生1および2」,「組織構築」,「疾患モデルと解析」,「線維化」,「創薬と治療」の6セッションで合計31演題が行われ,いつもの通り質問者がマイクに列をなすという光景がしばしば見られました.ポスター演題は合計16題で,口演にも増して活発な議論が行われました.今回は,後述のとおり,最優秀演題賞1題,優秀演題賞4第,優秀ポスター賞1題が選出されました.


写真4 展望講演中村和明先生

写真5 シンポジウム口演と質疑

写真6 ポスター発表質疑

初日のランチョンセミナー「空間オミクス解析の肝研究への応用と今後の展望」では,東京大学・大学院新領域創成科学研究科/岐阜大学・大学院医学系研究科の大西雅也先生から,最新の解析技術と応用例が披露されました.初日午後のスポンサードセミナー「肝細胞由来の液性因子による肝機能の維持について」では,株式会社フェニックスバイオ社の石田雄二先生から,キメラマウス由来肝細胞の培養上清の持つ多様な効果とそのメカニズムに関する研究が報告されました.2日目のランチョンセミナー「肝疾患のトータルマネジメント」では,浜松医科大学医学部の川田一仁先生から「C型肝炎撲滅に向けた最終課題―management of patients with pre- and post-SVR ―」と題したご講演が,順天堂大学・大学院医学系研究科の池嶋健一先生から「脂肪性肝疾患の新展開」と題したご講演が行われました.川田先生からは,特にC型ウィルス患者についてSVR達成が展望できる状況下での課題と細心の取り組みの紹介がありました.池嶋先生は,最新の診断技術や新薬の開発状況を説明され,多臓器との連関の理解の重要性をも指摘されました.


写真7 セイホクギャラリーでのランチョンセミナー

写真8 情報交換会

写真9 優秀演題賞表彰

初日の研究会終了後は,ランチョンやスポンサードセミナーが行われたセイホクギャラリーにて情報交換会を開催しました.予想を大きく上回り100名近くの参加者のご出席を得ることができました.ギャラリーと称するだけあって,夕暮れ以降は,昼間の講演時とは打って変わり素敵にライトアップされ,参加者の楽しい会話に弾みがついたようです.

最後に,参加されたすべての会員・非会員の先生方と,企画運営面で多大なアドバイスとご協力を賜りました代表世話人の仁科博史先生を始めとする世話人の先生方に深く感謝申し上げます.また,3つのシンポジウムとランチョンセミナーのオーガナイザーおよび講演者の先生方,そして一般演題・ポスター演題の講演者の方々に御礼申し上げます.特に今回は,企業展示を中心に多数の企業からご賛助・ご寄付を頂きました.ありがとうございます.

次回の2025年度の第32回研究会は,常任世話人の北海道大学 大学院医学研究院・坂本直哉先生が会長を務められ,2025年7月25日(金)・26日(土)に,北海道大学医学部にて開催されます.特に次回は,同じく坂本先生が大会長を御務めの第39回肝類洞壁細胞研究会学術集会を連続して開催の予定と伺っております.引き続き会員を始めとする多数のご参加をお願い申し上げます.

各種受賞者

最優秀演題賞

O1-3 パイオニアファクターSOX4による肝細胞の胆管リプログラミング開始機構
勝田 毅 先生 (東京大学 大学院工学系研究科)

優秀演題賞

O4-4 肝臓がんを抑制する細胞間の競合的コミュニケーション: FGF21により駆動されるがん抑制型細胞競合
小川 基行 先生(順天堂大学 薬学部/東京大学 大学院薬学系研究科/東京医科歯科大学 高等研究院)
O5-3 抗肝線維化作用を有する新規リゾホスファチジルセリン誘導体の創製と作用機序検討
陳 露瑩 先生(東京大学 大学院薬学系研究科/東京大学 定量生命科学研究所)
O6-1 TAZ-TEAD2経路に注目した肝細胞癌の進展の機序と治療戦略についての検討
齋藤 義修 先生 (大阪大学大学院 医学系研究科)
O6-5 SGLT2阻害薬(Tofogliflozin)の門脈圧亢進症予防効果に対する検討
鍛治 孝祐 (奈良県立医科大学 消化器・代謝内科)

優秀ポスター賞

P6 機能的な肝胆接続構造を持つ肝臓オルガノイドを用いたin vitro胆汁うっ滞モデルの作製
青嶋 研治 (東京大学 大学院新領域創成科学研究科/東京大学 医科学研究所)

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