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研究会活動紹介

優秀ポスター賞「成体マウス肝臓においてモザイク状のHippoシグナル伝達系破綻は細胞排除を誘導する」

東京医科歯科大学難治疾患研究所 発生再生生物学分野
宮村 憲央

この度の第21回肝細胞研究会におきまして、我々のポスター演題「成体マウス肝臓においてモザイク状のHippoシグナル伝達系破綻は細胞排除を誘導する」に対し、大変名誉ある優秀ポスター賞を授与いただき、誠にありがとうございました。

我々は、組織や器官内ではストレスや外環境の変化などによって、傷害や老化、トランスフォームなどを起こした不適応な細胞が生じることに着目しております。不適応な細胞は組織や器官の機能不全やサイズの異常、がん発症の原因となります。こうした不適応な細胞の多くはアポトーシスや免疫細胞によって排除されることが知られています。近年、ショウジョウバエや哺乳動物の初期発生では、組織や器官を構成する正常細胞が不適応な細胞を排除する細胞競合という現象が報告されています。しかしながら、この現象が哺乳動物成体の組織や器官でも観察されるかについては不明な点が多く残されています。

我々はマウスの肝臓において器官サイズの制御や発がんの抑制を担うHippo シグナル系をモザイク状に破綻(下流の転写共役因子YAPを活性化)させた場合の細胞の振る舞いについて解析を行ないました。その結果、Hippoシグナル系の破綻した細胞は免疫非依存的に細胞移動によって肝臓から排除されることを見出しました。YAPの変異体を用いた解析からYAPと共役する転写因子TEADを介した標的分子の発現制御がこの現象を担っていることが示されました。これらの結果は、Hippoシグナル系が細胞の外環境を認識し不適応な細胞を排除する役割を担っていることを示唆しています。

研究会では諸先生方から、この現象の生理的な意義やその分子メカニズムについてご質問ご指摘を頂きました。これらの点に関しては我々も大変興味をもっておりますので、今後解明を目指したいと考えております。

今回の受賞を励みに、これからもより良い研究ができるよう努めて参りたいと思います。本会の先生方には、今後ともどうか末長くご指導、ご鞭撻を賜りますよう心からお願い申し上げます。

最後に、本研究を遂行するにあたってご指導賜りました共同研究者の先生方に、深く感謝申し上げます。

 

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