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研究会活動紹介

肝細胞研究会シンポジウムI 「肝臓の発生・生長・再生における肝組織形成」 

東京大学分子細胞生物学研究所 宮島 篤

 本シンポジウムでは肝臓の発生・再生における肝幹/前駆細胞の起源および分化能、それを支える微小環境についての最近の成果が紹介され、大変活発なdiscussionが行われました。

 以前に京大の川口先生グループは、Sox9による細胞系譜解析では, DDC投与により門脈周囲のSox9陽性細胞から細胆管反応が起こり肝細胞にも分化すること、またCCl4による障害では門脈域のSox9陽性細胞から肝細胞が生み出されるということを報告しました。この実験では、Sox9遺伝子座にCre-ERTをノックインしたマウスを作出し、次にこれをマウスの交配によりRosa26-LacZレポーターマウスに導入していましたが,別のグループによるSox9-Cre transgenic mouseのモデルでの細胞系譜解析では、胆管からoval細胞が出現するという点ではほぼ一致していました。他方、CCl4による障害ではSox9陽性細胞から肝細胞が増えることはないと報告しており、これらのグループでの結果はかなり異なっていました。

 今回、川口先生は、この違いがSox9の発現レベルによる可能性を示唆しました。Sox9は転写因子ですので、発現量による影響は大きく、ノックインとtransgenicで結果が異なることもうなずける結果と思いました。

 一方、九大の鈴木先生は、CK-19-CreおよびAlb-Creによる細胞系譜解析から、oval 細胞は主に肝細胞に由来し、胆管からの寄与は限定的であることを示しました。また、彼らの細胞系譜解析から、胆管がんの起源に関しても肝細胞であるという興味深い可能性が示唆されました。

 さらに、旭川医大の永浜先生らはMx1-Creによる細胞系譜解析において、成体マウスの肝臓でラベルされる細胞は肝細胞であり、CCl4の連続投与により中心静脈域に出現する胆管細胞にはLacZ陽性細胞が存在することを示し、肝細胞から胆管への分化転換という彼らのモデルを支持する結果を紹介しました。

 Oval細胞の起源は胆管なのか?肝細胞なのか?さらに肝細胞は胆管細胞へと直接転換するのか?この問題に対して三者三様の研究が紹介されました。従来、Creによる細胞系譜解析の結果は絶対であると信じられていましたが、今回の3題の発表は、細胞系譜解析は実験デザインにより結果と解釈は変わりうることを示しており、こうした実験の結果は注意深く読み解く必要があると感じました。

HP 第19回肝細胞研究会サイト

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