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研究会活動紹介

ワークショップ「肝障害・修復における肝構成細胞間の相互作用」

東海大学医学部再生医療科学 稲垣  豊
順天堂大学医学部消化器内科 池嶋 健一

肝臓の主たる構成細胞である肝(実質)細胞と非実質細胞との細胞間相互作用は、肝における炎症、線維化、再生、発癌などの病態形成に深く関わり、そのメカニズムの解明は肝疾患の新たな診断と治療戦略を構築する上で重要かつ必須である。とりわけ近年では、メタボリック症候群の肝臓病変とされる非アルコール性脂肪肝炎の病態や肝移植に伴う諸問題を理解する上で、また肝再生機序を解明して再生医療の実現化を目指す上でも、肝構成細胞間の相互作用が果たす役割の解明が一層注目されている。以下に、本ワークショップにおいて発表された8演題を振り返りたい。

筑波大学消化器外科の田村孝史先生と山梨大学第1外科の河野寛先生の発表では、いずれも肝虚血再還流障害の病態における細胞間相互作用が論じられた。すなわち、前者では虚血後早期におけるKupffer細胞と血小板との肝類洞内での膠着が示され、後者では亜急性期に好中球が肝へ浸潤する際に脾臓が産生するIL-17が重要な役割を担っていることが明らかにされた。

マクロファージ/Kupffer細胞は、肝の炎症において中心的役割を演じている。鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学の熊谷公太郎先生は肝内マクロファージが産生するオステオアクチビンがapoptotic bodyの貪食に関わることを、また秋田大学消化器内科の三浦光一先生はTLR2を介したKupffer細胞の活性化が非アルコール性脂肪肝炎の病態に深く関わることを報告した。

肝の再生機構を論じるにあたって、幹前駆細胞を制御する組織の微小環境(ニッチ)の研究は、ようやく緒に就いたばかりである。東京大学分子細胞生物学研究所の高瀬比菜子先生はOval細胞の制御におけるFGF7の役割に焦点を当て、また東海大学再生医療科学の三上健一郎先生は肝線維化と再生の病態連繋におけるNotch/Jagged-1シグナルに着目して、それぞれの研究を推進している。

最後の2演題は肝線維化に関連するもので、大阪市立大学肝胆膵病態内科学の飯塚昌司先生は星細胞の活性化に関与するマイクロRNAを同定し、大阪大学消化器内科の小玉尚宏先生は肝細胞のp53活性化がCTGF発現を介して肝線維化を誘導する新たなメカニズムを明らかにした。

これら8演題の発表に対してフロアからは活発な質問と討議がなされ、肝構成細胞間相互作用に対する参加者の深い興味と、本ワークショップを企画した渡辺純夫会長の高い識見とが示された。

HP 第18回肝細胞研究会サイト

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