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研究会活動紹介

第17回肝細胞研究会 優秀ポスター賞を受賞して

高瀬 比菜子
東京大学 分子細胞生物学研究所 発生・再生研究分野

 第17回肝細胞研究会において「FGFシグナルによるマウスオーバル細胞の制御」という演題でポスター発表をさせていただきました。この度は優秀ポスター賞という栄誉ある賞をいただき、大変嬉しく思っています。学会長の榎本先生をはじめ学会関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。

 ラットやマウスにおいて重篤な肝障害時に出現するオーバル細胞は、成体肝幹/前駆細胞とみなされていますが、その動態を制御する分子機構については不明な点が多く残されています。我々はマウスモデルを使用して、オーバル細胞と周囲の微小環境(ニッチ細胞)の関係をシグナル伝達という観点から明らかにすることを目的に研究を進めています。
 我々は、DDC食餌投与によるマウス肝障害モデルにおいてThy1陽性細胞が門脈域周辺で増加し、オーバル細胞と近接して存在することを見出しました。その一方で、オーバル細胞誘導肝においてFGFファミリーの一つであるFGF7の発現が増加していることを突き止めました。遺伝子発現を検討したところ、Thy1陽性細胞がFGF7を、EpCAM陽性のオーバル細胞がFGF7の受容体であるFGFR2bを、それぞれ発現していることが判明しました。つまり、オーバル細胞はThy1陽性細胞からのFGFシグナルを直接受け取っていると考えられます。実際にFGF7 KOマウスでは肝障害下でのオーバル細胞の出現・増殖が抑制され、さらにFGF7の強制発現により正常肝臓でオーバル細胞様の細胞が出現することが観察されました。以上の結果から、Thy1陽性細胞がオーバル細胞のニッチを形成しており、ニッチシグナル分子としてFGF7が機能している可能性を考えております。
 今後は、このようなFGF7の機能が、異なる肝障害モデルや生物種においても共通しているかについて解析を進める予定です。また、我々はFGF7の上流/下流に存在するシグナル、あるいはオーバル細胞からThy1陽性細胞へのシグナルについても興味を持っています。細胞集団とシグナルネットワークを統合的に理解することが重要な課題であると考えています。

 ポスター発表では多くの先生方より貴重なご質問とご意見をいただきました。これらを参考に、今後もよりよい研究を目指して精進したいと思います。最後に、本研究を日頃よりご指導していただいております東京大学 分子細胞生物学研究所 宮島篤先生、伊藤暢先生に深く感謝を申し上げます。

HP 第17回肝細胞研究会サイト

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