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研究会概要

肝細胞研究会参加記

小島伸彦
東京大学 生産技術研究所 

留学で国外に滞在していたため、2006年度以来となる肝細胞研究会への参加となりました。留学中は肝臓の仕事を一時的に休止し、再生医療を目指した腎上皮細胞の前駆細胞作成などの研究を行っていました。昨年10月に再び東大・生産技術研究所に戻った際、肝臓のデータは一つもありませんでした。しかしなんとか無事に帰ってきたことを肝細胞研究会の皆様に報告したい、そして美味しい秋田の料理とお酒を楽しみたいと思い、新しいアプローチで肝類似組織を作るという目標を立てて研究を再開いたしました。

私にとって、発表時に最も「緊張」するのがこの肝細胞研究会です。これは参加されている先生方のレベルの高さに加え、発表に対してフロア全体を巻き込むような活発な議論が行われるという、肝細胞研究会ならではのすばらしい気風があるためです。今回も冷や汗をかきながら発表をさせていただきました。発表後、励ましの言葉と具体的な実験手順に関する質問を頂きました。大変感謝しております。懇親会では、秋田の銘酒の心地よさも手伝って、懐かしい先生方のお顔を拝見するたびに、これまで参加した研究会での様々なシーンが脳裏に浮かび上がってきました。

私が本研究会で始めて発表を行ったのは、1999年に慶応義塾大学で開催された第6回の研究会です。当時は東大・分生研の宮島篤教授の研究室に在籍しており博士課程2年でした。私は修士時代には阪大・応用生物工学科の吉田敏臣教授(当時)の研究室に所属し、現・北海道大学教授の高木睦先生のもとで人工肝臓におけるアンモニア代謝の速度論的解析をおこなっていました。主にラット初代肝細胞を使っていたことから、肝機能を長持ちさせる方法に興味を持ち始め、博士課程では肝臓でなくてもよいので、発生や分化における遺伝子発現制御に関する研究をしたいと思い至りました。どうせなら東大の研究室を回ってみようと考えて夜行バスで東京に向かい、出たとこ勝負のアポなし研究室訪問を始めました。いくつもの偶然が重なった結果、一件目に宮島研究室を訪ねました。宮島先生はご不在でした。しかし、当時助手であった木下大成先生が、この奇妙な訪問者に対して実に丁寧に対応してくださいました。事情を説明したところ、「まだどこにも発表していないので詳しい因子まで教えることはできないが、つい先日、マウス胎仔の肝芽細胞をin vitroで分化させるシステムを開発した」と教えていただきました。無謀すぎる研究室訪問は一件目で終了することになりました。秘密の因子はオンコスタチンMでした。このような運命的な出来事がなければ、肝臓の仕事を続けていなかったかもしれませんし、肝細胞研究会に参加することもなかったかもしれません。

博士課程の途中から共同研究を始めたことが縁となって、現在は酒井康行研究室に在籍しています。最近は、アビジンとビオチンの強力な結合力(AB結合)を利用し、in vitroにおける肝組織再構築を試みています。細胞表面にアビジンあるいはビオチンをラベルすることで、それぞれの細胞同士を瞬時に接着できるようになります。このAB結合による接着は24時間以内に細胞自身の分子による接着に置き換わります。したがってAB結合は、バラバラの細胞集団から組織を構築するための「仮止め用瞬間接着剤」といえます。この非常に便利な接着剤を利用して、「二種類以上の細胞からなるヘテロ凝集体を一気に作製した後、細胞自身による自己組織化を誘導する」というアプローチと、「単一細胞操作技術を駆使することで、細胞をレゴブロックのように一つ一つ組み立てる」というアプローチで組織構築に取り組んでいます。特定の細胞だけからなる肝組織、あるいは特定の配列をもつ肝組織は、in vitroの様々なアッセイに役立つのではないかと考えています。

最後になりましたが、今回の素晴らしい研究会をまとめてくださった会長の榎本克彦先生と企画運営に携わったすべての先生方に、この場をお借りして御礼申し上げます。大変ありがとうございました。

HP 第17回肝細胞研究会サイト

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