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研究会活動紹介

第16回肝細胞研究会 優秀演題賞を受賞して

市戸 義久
札幌医科大学 がん研究所 分子病理病態学部門

 第16回肝細胞研究会の一般演題(5)幹細胞にて,「Thy1/CD44両陽性肝前駆細胞の分化機序の解析」というタイトルで発表をさせていただき,優秀演題賞を頂く運びとなりました。思いも寄らない受賞であり、大変名誉なことと感じると同時に恐縮しております。

 今回の受賞の内容は,“Oval細胞が小型肝細胞を介して,肝細胞に分化する”という仮説を証明するために,Thy1をOval細胞マーカー,CD44を小型肝細胞マーカーとしてD-Galactosamine(GalN)投与ラット肝臓よりThy1陽性及びCD44陽性細胞,そして分化過程においてその中間に位置すると考えられるThy1/CD44両陽性細胞を特異抗体と磁気ビーズを用いて単離し,分化機構の解析を行いました。

 本研究で最も苦慮した点は,これまでThy1は肝障害時に出現する偽胆管などに強く発現することから,Oval細胞のマーカーであると信じられていたものが,最近Thy1はmyofibroblastのマーカーである,とした論文が報告されて以来,それがあたかも正しいかのように多くの研究者に信じられていることでした。この反証として,私はThy1陽性細胞の中にCK19陽性のOval細胞が含まれていること,そして肝障害モデルの時期と重症度によってDesmin 陽性のmyofibroblast様細胞が含まれていることから,Thy1陽性Oval細胞はヘテロな細胞集団であることを示してきました。

 本研究領域は,肝幹細胞の由来や分化誘導のメカニズム,肝障害時における上皮間葉転換(EMT)やmyofibroblastとの相互作用など,多くの疑問が残っております。そのような議論の中での今回の受賞は恐縮の極みであります。今後は、今回の研究会において得た、多くの先生との有意義な議論やアドバイスを参考に,多くの疑問を解明し,より質の高い研究を行って参りたいと思います。そして今回の研究においてご指導・助言をくださった先生や,またお力を貸していただいた研究室の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。 

HP 第16回肝細胞研究会サイト

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