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研究会活動紹介

第16回肝細胞研究会に参加して

相崎 英樹
国立感染症研究所 ウイルス第二部

 私は第16回肝細胞研究会で「C型肝炎ウイルス粒子の脂質成分の感染における役割」という演題で発表させてもらい、優秀演題賞を授与していただきました。誠にありがとうございました。

 C型肝炎ウイルス(HCV)などのエンベロープウイルスは小胞体、ゴルジ体、形質膜などの細胞の生体膜を被って出芽するため、細胞の膜脂質は粒子形成に重要な役割を果たしているものと考えられています。本発表では、培養細胞で作製した感染性HCV粒子の膜脂質の性状を調べ、HCVの感染、粒子形成におけるウイルス膜脂質の役割を報告しました。また、これまでの研究成果から、HCVはその生活環のうち、感染、複製、粒子形成等の多くのステップで細胞の生体膜の脂質を利用していることがわかってきました。そこで、HCV感染細胞にコレステロール、スフィンゴ脂質合成阻害剤を投与してみるとウイルス産生を抑えることができました。肝細胞の脂質代謝、またはウイルス粒子関連脂質はC型肝炎治療薬開発の新たな標的となる可能性があることを示すことができました。

 ウイルス研究はあまり肝細胞と関係ないような印象を受けますが、ウイルス学の進歩は常にウイルスを増殖できる培養細胞系の進歩に依存してきました。現在、効率の良いHCV培養実験系は、私の研究室の脇田隆字部長が開発した、劇症肝炎症例の急性期血清からクローニングした JFH1というウイルスと、Huh7細胞の一部の株を用いた組み合わせでのみ成立しております(Wakita et al., Nat. Med. 2005)。さらなる進歩のためには、より多くの種類のHCVを効率よく増殖できる培養細胞系の開発がHCV研究には不可欠だと思われます。

 私は大学卒業後、肝細胞の形態と機能について研究を始め、ラジアルフロー型バイオリアクターで肝細胞を3次元培養系することで、肝細胞本来の機能を引き出せることを見出し、HCV感染実験に応用できることを報告してきました。久しぶりに参加させていただいた今回の肝細胞研究会では、肝幹細胞等の研究が大きく発展していることに驚かされ、大変勉強になりました。今回の研究会で得られた情報や多くの先生方との有意義な議論やアドバイスを今後の研究に生かして行きたいと思います。

HP 第16回肝細胞研究会サイト

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