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研究会活動紹介

第15回肝細胞研究会を終えて

頼 紘一郎
静岡大学大学院 理学研究科 生物科学専攻

 私は静岡で開催された第15回肝細胞研究会において、『温度感応性ゲルを用いたマウス胎児肝芽細胞の新規精製技術の確立と、その分化特性に関する研究』というテーマでポスター発表をさせていただきました。必ずしも扱いやすいわけではないゲルを使用したこともあって、条件設定や技術的な面において苦労した部分が多く、それをクリアーするのにアイデアが必要だった研究だと思います。今回、その研究発表に関して、ポスター賞を頂くことができ、大変光栄かつ、幸福だと思っております。

 肝臓の発生・分化機構の解明のために、発生期肝幹細胞である肝芽細胞の精製技術はいくつか開発されていますが、私は、さまざまな観点からまだ十分ではないと考えました。そこで、Mebiol gelという温度感応性ゲルを用いて、マウス胎仔肝臓から肝芽細胞を精製し、肝芽細胞の分化特性について解明することを目的として、研究を開始しました。

 研究の結果、E12.5ならびにE17.5肝臓細胞をMebiol gel内で培養すると、肝芽細胞は集合塊を形成することが分かりました。1~5日間培養後、細胞集合塊を回収し、肝星細胞マーカー、血管内皮細胞マーカーのタンパク質及びmRNAの発現を免疫組織化学法、RT-PCR法により解析すると、これらのマーカーは全く発現が認められませんでした。また、マトリゲルの添加により、肝細胞マーカーであるHNF4αを発現していない細胞が出現し、かつ、細胞集合塊が嚢胞を形成しました。

 これらの結果から、E12.5ならびにE17.5肝臓細胞をMebiol gel内培養することで、間葉系細胞は死滅し、肝芽細胞由来の細胞のみが生存し回収が可能であるということ、また、マトリゲルの添加により、肝芽細胞の分化状態を制御しうることが分かりました。

 今後は、さらに研究を重ね、肝芽細胞の分化がどのようなメカニズムを介して誘導されているのか、完全な胆管を形成させることができないか、また、Mebiol gel によってなぜ間葉系の細胞が死滅するのかなど、多くの疑問を解明し、肝臓という臓器がどのように発生し、形成されているのか理解していきたいと思っております。その研究の過程では、今回の研究会において得た、多くの先生方との有意義な議論やアドバイスを参考にし、より質の高い研究を行っていきたいと思います。

HP 第15回肝細胞研究会サイト

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