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研究会概要

シンポジウム2「細胞外環境設計による肝臓の再構築~肝細胞の産業利用に向けて~」を終えて

竹澤俊明
独立行政法人 農業生物資源研究所

 本シンポジウムは大会長の塩尻先生より「細胞外環境設計による肝臓構築」のようなアウトラインに幹細胞の話題も取り入れて纏めてほしいとの御依頼を受けて、横浜市立大学の谷口英樹先生と竹澤でオーガナイザーの大役を仰せ付かり企画した。当初、以下の3つのカテゴリーを設定して、独創的なアイデアに基づいて最先端の研究を展開している先生を演者として選出した。シンポジウムでは、各演者の先生に最新の成果を含めて御講演頂いた。具体的には、最初のカテゴリー「細胞外環境となる材料・素材の工夫および設計」では、①竹澤は再生肝組織の微小構造と成分を保持している病理用の凍結切片を培養担体に利用して幹細胞を肝細胞様細胞に分化誘導する技術、および生体内結合組織に匹敵するコラーゲン線維密度のコラーゲンビトリゲルを培養担体に利用して初代肝実質細胞の機能を維持する技術について、②国立環境研究所の持立克身先生は上皮細胞株の培養により形成させた基底膜構造体を上皮細胞除去後に他の細胞の培養基質として利用する技術を確立し、基底膜構成成分であるラミニン分子のアイソフォームの違いが細胞分化に与える影響について、③ニッピバイオマトリックス研究所の服部俊治先生はコラーゲン分子の集合状態の違いが細胞機能に及ぼす影響について、④東京工業大学の赤池敏宏先生は細胞間接着分子であるカドヘリンを固定化した培養基質(将来的には時空間情報制御型マトリックス工学)を利用して細胞挙動を制御する技術について紹介した。次のカテゴリー「三次元培養装置」では、⑤崇城大学の松下琢先生は極微小流量を制御できるシリンジ先端にスフェロイドを吸引固定した状態で吸引を継続することで、スフェロイド内部に培養液の流れを生じさせながらスフェロイド組織を成長させる装置について、⑥東京大学の酒井康行先生は高酸素透過性のポリジメチルシロキサン(PDMS)を培養基質に利用して、肝実質細胞と非実質細胞の三次元組織体に酸素を直接供給する装置について紹介した。最後のカテゴリー「幹細胞からの三次元組織の再生と培養」では、⑦谷口英樹先生はマイクロパターンを有する培養基材で行える三次元培養系と、その培養系を用いて幹細胞クローンから分化したヒト肝細胞を創薬へ応用する構想について紹介した。

 肝実質細胞は培養系では機能維持が難しく非常にデリケートな細胞であることは言うまでもないが、それだけに肝臓の再構築を目指した研究では肝細胞系譜の制御、非実質細胞の適度なリクルート、さらに酸素や栄養の供給と代謝物(老廃物)の除去を可能にするような細胞外環境を設計していくことが重要となる。このような研究アプローチには斬新な学際的アイデアを取り入れていくことが必要不可欠である。近い将来、今回のシンポジウムで紹介されたような肝細胞の培養技術が当研究会の会員ネットワークによって一層発展し、創薬や再生医療に関連したビジネスに利用されることを期待したい。最後に、この場をお借りして本シンポジウムの機会を与えて下さった大会長の塩尻先生に心より感謝の意を表したいと思います。

HP 第15回肝細胞研究会サイト

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