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研究会概要

肝細胞研究会代表世話人  佐々木 裕
(熊本大学大学院生命科学研究部消化器内科学)

肝細胞研究会は、徳島大学名誉教授市原明先生が1985年に立ち上げた初代培養肝細胞研究会に端を発しています。1960年代後半に肝細胞の培養技術が開発され、その後改良が加えられた結果、初代培養肝細胞を用いてホルモンや増殖因子の機能解析が行われるようになりました。初代肝細胞研究会はそのような研究の発表と討論の場として、約10年間、本邦における肝細胞研究を牽引しました。鹿児島大学の大工原恭先生、坪内博仁先生らによって発見された肝細胞増殖因子(HGF)の最初の報告が第1回の研究会でなされたことからも、初代培養肝細胞研究会の本邦での学問的な位置づけを伺い知ることができます。

その後、研究の流れを継いで1994年に肝細胞研究会が設立され、赤池敏宏先生(東工大)、故 藤原研司先生(埼玉医大、横浜労災病院)、吉里勝利先生(広島大、現(株)フェニックスバイオ)、坪内博仁先生(鹿児島大学、現 鹿児島市民病院)、宮島 篤先生 (東京大学分子細胞生物学研究所 発生・再生研究分野)が、歴代の研究会代表世話人として本研究会の発展に貢献されました。

現在の総会員数は500名にものぼり、基礎系研究者と臨床系研究者がほぼ同数で研究会は構成されております。研究対象を肝細胞に限定せず、肝臓の構成細胞全般に焦点を当てて、細胞間相互作用も取り上げております。研究を発表し互いに討論することで新たな発想を生み出し、最終的には臨床への応用を目指しています。これまでの具体的な成果として、肝細胞や肝幹細胞の分化・増殖に関する基礎研究がヒト肝細胞のキメラマウスの開発に結び付き、創薬や薬効評価に必要な科学的な基盤を提供しました。また肝実質細胞(肝細胞)と非実質細胞(類洞内皮細胞、肝星細胞など)との機能的連携の解析結果は、肝再生の分子基盤を明らかにしました。

一方、臓器を構成する複数種の細胞のそれぞれの前駆細胞をiPS細胞から分化誘導し、3次元的に共培養することでオルガノイドと呼ばれるin vitroで臓器を作成する技術が、2010年代初めから急速に進歩しています。肝臓に関しては、横浜市立大学の谷口英樹先生らが、ヒトiPS細胞よりヒトのミニ肝臓(オルガノイド、iPSC肝芽)を大量に製造する技術を最近報告されました。このような技術開発に基づく肝疾患に対する再生医療も、近い将来実現するものと期待されます。これもひとえに肝細胞や肝幹細胞の分化・増殖に関する基礎的研究の賜物であり、その意味でも肝細胞研究会は肝臓領域の再生医療に大きく貢献しているものと考えます。

さて近年の治療法の進歩に伴い、今後ウイルス性肝疾患、とりわけC型肝炎ウイルス関連肝疾患が減少していくことが考えられます。その一方、アルコール、肥満、糖尿病などを基盤とした生活習慣関連肝疾患の増加が考えられます。このように肝臓病の疾病構造の変化を迎えますが、今後も一定数の急性肝不全や慢性肝不全の発生は予想されます。そのため現行の臓器移植に代わる再生医療の確立は喫緊の課題と言えます。また、症例数は少ないものの遺伝性肝疾患に対する細胞医療も確立する必要があります。基礎系研究者と臨床系研究者とが連携し、肝臓領域の再生医療や細胞医療の方向性を見極めつつ、中心的な立場で研究を遂行していくことが、肝細胞研究会としての使命ではないかと考えております。

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